映画紹介

この、ロバートストーン監督による映画は、まさに“パンドラの箱”を開けてしまった時のように、エネルギーを考えるあらゆる立場の人々にとって衝撃的な内容を持っている。原子爆弾やフクシマ事故は、原子力の安全神話を完全に破壊してしまった。しかし、もしその観念が間違っているとしたら?……観客は、我々が恐れている原子力というテクノロジーこそが、地球を気候変動から守ってくれること、そして途上国に住む何十億人もの人々を貧困から救うということを目撃することになるだろう。

この映画でストーン監督は、自分自身の環境保護論者としての日々と、映画出演によってキャリアと評判が失墜するリスクを負ってまで“転換”を述べる元・反原発主義者たちを、力強く描写している。また、スチュアート・ブランドを始めとする数多くの環境活動家を紹介するなかで、環境保護論者によくある議論の弱点を追求している。この映画こそ、環境保護を考える際に陥りがちな感情面が優先した賛否論を、合理的・科学的な議論へと転換するための金字塔となるはずである。

人類はこの数十年の間に、途上国における人々の生活水準の向上のために、現在の2倍どころか3倍ものエネルギーを必要とすることになる。クリーンで二酸化炭素を排出しないエネルギー源が出現しないかぎり、地球の温暖化は免れない。世界はエネルギー枯渇に直面しつつあり、結果的に環境危機をよぶことから地球単位のサバイバルの始まりとなる。この現状に対して、風力と太陽光しかないというジレンマが、環境運動の主だった潮流を完全にバラバラにしてしまった。この問題に正面から向きあったのがこの映画である。3年の歳月を費やして、海外4カ所でのロケを敢行、こと細かく事実調査を行った本作では、化石燃料に代わる唯一のエネルギー源が環境保護派の最も恐れる原子力であることを描いている。

何の権力に縛られることなく製作されたこの「パンドラの約束」でストーン監督は、環境保護派であるマーク・ライナース氏と、フクシマの立ち入り規制地域にも足を踏み入れて撮影を行った。その後、あのスリーマイル島やチェルノブイリにも赴いた。これまでの反原発論者が示してきた、ヒロシマへの原爆投下や、東西冷戦時に暗い影を落とした核実験の数々が、原子力と核兵器の混同を呼んできたと述べる。作品中では、増え続ける原子力賛成論への転換者たちの話に魅了されるが、監督は特に5人にスポットを当てている。スチュアート・ブランド氏、リチャード・ローズ氏、グイネス・クレイヴンズ氏、マーク・ライナース氏、そして、マイケル・シェレンバーガー氏だ。彼らがなぜ、そしてどうやって転換したかを映画では克明に描いている。さらに、レン・コッホ氏、チャールズ・ティル氏という、原子力に携わるパイオニア的人物の、さらに安全な最新原子炉への挑戦も追い続けた。

環境保護派のなかでも新世代は、気候とエネルギーの関連性に関して、左派だろうが右派だろうが、原子力利用の是非は避けられない論議だと感じている。有名な神話である「パンドラの箱」では、開けたとたん全ての邪悪なものが霧散してしまう。しかし、忘れてはならないのは、その箱の底には「希望」が入っていたことである。

パンドラの約束